三方よし

三方よし

「マーケティング理論は色々とあって小難しい」と思っている一人です。

4C理論、イノベーター理論、PEST、SWOT、などなど聞いたその時は納得するが、いざ実践となった時に頭の引き出しに入ってないことも多いと思う(私の場合だけかもしれないが)

これまで私が読んで聞いて、分かりやすく腑に落ちたのは○○理論などではなく、江戸時代に近江商人の心得「三方よし」である。

三方よしとは

  • 買い手よし
  • 売り手よし
  • 世間よし

商売をするうえで、この三つが大事だよという経営哲学である。

「経済哲学」と言われると、また取っつきにくい気がしてしまうが、まぁ聞いてほしい。

例えば今では当たり前になったCMソング。日本で初めて利用したのは今から200年以上も前のこと。
「もぐさ屋伊吹堂」の亀谷左京(六代目松浦七兵衛)が江戸に行商に出て、お金をたくさん儲けたので吉原に立ち寄って豪遊したときに「たくさんお金を使うから、その代わり吉原に遊びに来るお客さんに 『豪州柏原 伊吹山のふもと 亀谷左京のきりもぐさ』とうたい聞かせてほしいとお願い事をしたのが発端と言われています。近江に戻ってからは街道にで荷物運搬や川渡しをやっている人たちにお酒を振る舞う代わりに、この歌を歌ってくれとお願いをして、伊吹もぐさは全国に知れ渡ったらしい。

マーケティング4.0と言われる時代、そのれ歴史は1900年代のとにかく製品を量産し安く売るというマーケティング1.0から始まっていると言われるが、日本では1700年年代にに、まず亀谷左京が誰でも口ずさむことができる簡単な言葉で「伊吹もぐさ」という歌をつくり、民衆に喜んでもらうためにお金を使い、販促活動として歌ってもらい、その歌が広まったところで多くの売り子を雇い屋号入りの法被を着せて行商して富を成したとのこと。

出典元:書籍NPO法人三方よし研究会「Q&Aでわかる近江商人」より

※「もぐさ」とはヨモギの葉の裏にある繊毛を精製したもの。主にに使用されるものだそうです。Wikipediaより

江戸時代の商いを見ると日本人は知恵と工夫、空気を読むというリソースがあったからこその三方よしが生まれたのではないかと。

以前聞いた話で、経営学の神と呼ばれるピーター・ドラッカーが日本人の商いを見て「なぜ日本人は相手詳しく知らないのに、欲しいものが分かるんだ?!」と驚いたらしい。

「空気を読む」事ができる日本人ならではの接客と言える。これは心理学でもいえる事なのだが1970年初頭に確率されたNLPという心理学に出てくる「空気を読む」という身体感覚優位の人が得意とするものでもある。

 もう少し深い話をすると、近江商人は信仰心が非常に暑かったらしい。特に浄土真宗の信者が多く、その教えとして「極楽浄土」を信じていた近江商人が多かったことが伺える。要は今生で「徳」を積むことで天国へ行けるということだ。その「徳」とは不正や貪欲などを持ってはいけないといった説法であることを考えると、近江商人の三方よしは信仰心が反映されている事が分かる。
現代の私たちは「信仰心がない」といあ「無宗教」とかよく言われているが、小さいころから悪い事をしたら地獄に行くという教えを何となく聞かされて、潜在的な部分でその教えがアンカーとして打ち込まれているような気がする。

だからこそ、この三方よしの教えが聞いてしっくり来る人も多いのではないだろうか。

最後に近江商人が残した家訓を転載しておく。

一 商売は神様に代わって行うから、正直、誠実に行う
二 思いやりと信用を大切にする
三 自己の品性を養い、法則や約束を守る
四 質素倹約をはかり、勤勉・努力する
五 お客(相手)の事を第一に考える
六 お客(すべての人々)を差別せず平等に扱う
七 人をだましたり、欺いたりしてはいけない
八 利益は、世のために奉仕した結果、得られるものである
九 社会奉仕とは対価を求めず、仏さまの心のように無心で行う

NPO法人三方よし研究所「Q&Aでわかる近江商人」より

この他にも近江商人が残した家訓は他にもあるが、「思いやりと信用」をいうのはコロナ禍で生きる現代の私たちにとって今一度商売の在り方を原点回帰として見つめなおすきっかけになるかもしれない。

近江商人イラスト

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